8歳で来日。疎外感から周りと仲良くなれず、先生と親の重圧もあり不登校に
私はフィリピンで生まれ育ち、7歳まではタガログ語を話していました。フィリピン人の母親の仕事の都合で8歳の時に来日し、東京の都立小学校へ入学。日本語が話せないため、小学校で1時間目の授業を受けたら日本語学校で日本語を学び、午後にまた小学校で授業を受ける、という生活を送りました。1日中小学校にいるわけではなく、しかも日本語が未熟なのでどうしても疎外感を覚えるようになり、先生とのコミュニケーションもうまくいかない時がありました。
学校生活を楽しみたいのに、自分を出せず楽しめない。それは中学生になっても変わらず、中学2年の頃には先生からの「もう中学2年生なんだから真剣に勉強しなさい、ダラダラ過ごす暇はない」といったプレッシャーと、母親からの「もっと頑張れ」という期待が重なり、重圧に押されて不登校に。1日登校したら数日休むようなサイクルで別室登校を続け、登校しない日はオンライン授業を受けていました。
重圧によるストレス過多、それに伴う体調不良、そして、みんなと同じことをやりたいのにできないジレンマを抱え、当時はこのまま高校に入学できるのかとても不安でした。
転機が訪れたのは、普段から相談に乗ってもらっていたスクールカウンセラーの先生に通信制高校のことを教えてもらってからです。どんな場所だろうと通信制高校のホームページやSNSを調べると、私のように不登校の経験がある子でも自分らしく学校生活を送っていると知りました。
「もしかすると楽しそうなのはSNS上だけで、通信制高校に入ってもみんなと仲良くなれず孤独なままかもしれない…」
そんな不安はあったものの、一縷の望みをかけてスクールカウンセラーの先生に協力してもらい、三者面談で「通信制高校に行きたい」と親を説得しました。日本人の父親は、最初こそ通信制高校についてよく知らず懐疑的でしたが、スクールカウンセラーの先生の話を聞いてからは理解を示して応援してくれました。でも、母親は「通信制高校なんて大丈夫なの?」とまだ納得できない様子でした。通信制高校は学校やコースによって登校日数も勉強内容もまったく違うため、私の将来を案じ、心配して反対していたのです。
そこで、実際にどのような学校か見てみようと3~4校に目星をつけてオープンキャンパスに参加しました。
オープンキャンパスに参加し、母親は通信制高校と娘を知った
通信制高校はたくさんありますが、私は日本航空高等学校・通信制課程(以下、日本航空高校)を選びました。
日本航空高校を選んだきっかけは、日本航空大学校のTikTokを見たことです。来日時の飛行機で出会ったキャビンアテンダント(CA)の方がとてもやさしく、テレビドラマを見て「私もCAになりたい」と憧れを抱くようになりました。とはいえ、叶えることは難しいだろうとも自覚しており、それはただの憧れにすぎませんでした。でも、日本航空大学校にはキャビンアテンダント・グランドスタッフ科があり、航空業界に圧倒的に就職しやすいと知りました。「この学校なら夢が叶うかもしれない」と思えたのです。
通信制高校は、通信制高校ナビというサイトで探しており、そこで日本航空高校の存在を知りました。「行きたいと思っていた日本航空大学校に高校の通信制課程があるなんて…!」とすぐにオープンキャンパスに行ってみました。
実際に学校を見学して授業や進路について詳しい説明を受けてからは「日本航空高校の通信制課程から大学校に行き、CAになりたい」と目標が明確になり、同時に母親も通信制高校への認識を改めたようでした。何より「ココなら娘は学びたいことを学べるのか」と理解してくれました。
母親が私のやりたいことを理解してくれたことが本当にうれしかったですし、いまでは私の夢を応援してくれています。いまも唯一懸念しているのは「夏休みが長すぎる」ということくらいです。
航空科で支え合える仲間ができた。実習やアルバイトを通して自己成長も実感
現在は日本航空高校の航空科・週1登校コースに通い、授業やレポートでは主要5教科7科目の他に航空機に関する専門的な知識を学んでいます。入学時のクラスメイトは17名でしたが、転入や編入で随時人数は増えていき、いまは40名です。
中学まではなかなかクラスメイトと打ち解けることができませんでしたが、高校では休み時間などに少しずつ話すようになり、距離が縮まっていきました。相手から声をかけられ、自分からも声をかけるようになり、いまではみんな仲良しです。
東京キャンパスは目黒にあるので、放課後は渋谷に移動してファミレスで話し込んだり、ゲームセンターで遊んだり、高校生活を謳歌しています。同じような夢をもつ、支え合える仲間ができ、この学校に入学して本当に良かったです。
航空科の授業では実技実習も豊富です。空港を見学した際は誘導エリアなどの立ち入り禁止エリアを含め敷地内を隅々まで周り、夏には北海道キャンパスで2泊3日の合宿も経験しました。
特に夏の合宿は1時間の講義以外はすべて実地訓練です。キャビンアテンダントの仕事や飛行機を誘導するグランドハンドリング、飛行機からの脱出シミュレーションなど、さまざまな貴重な体験ができました。週1日だけ登校すれば良いカリキュラムの特性を活かし、合宿後も北海道に数日留まり、そのまま北海道を旅行する友達もいたほどです。
他にも、校外学習では有名なテーマパークや水族館へ行き、10月には体育祭、11月には文化祭(航空祭)がありました。航空祭で実行委員を担ったことも良い思い出です。
登校しない日は主にアルバイトをしています。ドーナツショップで週に3~4日働き、結婚式場で週に1日配膳をしています。母親がホテルで働いており、そこのウエディング部門に紹介してもらって結婚式場のアルバイトもはじめることができました。披露宴という、出席者がみんな幸せな場所でいろいろな人と話すのが楽しく、学校の勉強や実習だけではなくアルバイトを通しても自分が成長できていると実感しています。
通信制高校なら自分の居場所ができる。そこから将来を見据えられる
私は8歳で来日しましたが、ビシバシ指導される全日制の小学校・中学校には結局馴染むことができませんでした。スクールカウンセラーの先生に教えてもらうまで通信制高校について知らず、入学前は「大学校に行けるのか、就職できるのか」と母親に問われて少なからず不安もありました。
しかし、実際に入学してみると先生たちは友達感覚でやさしく接してくれ、1人ひとりのために居場所をつくってくれました。転入生がきたら先生が事前にどんな子かアナウンスしてくれ、校外学習などを通じて自然と仲良くなれます。私も日本航空高校に来たからこそプレッシャーから解放され、体調も良くなり、学校生活を自分らしくのびのびと楽しめるようになりました。
もし全日制の学校でプレッシャーや息苦しさを感じているのなら、通信制高校の自由な環境で過ごすべきだと思います。通信制高校なら学校の中にも自分の居場所ができますし、その方がきっと自分らしく生きられるはずです。
いまの目標は、日本航空の大学校に進学すること。そして、ゆくゆくはキャビンアテンダントになりたいです。航空業界で働くために英語の勉強に力を入れているので、高校生のうちに英検準1級に合格したいと思っています。
私はTikTokで日本航空大学校に興味を持ち、それから高校の通信制課程があることを知りました。TikTokで学校のPR動画を見たのはたまたまだったのかもしれません。でも、その動画から入学につながり、私は人生で初めて学校に居場所ができました。もしこの記事が私にとっての動画のように、通信制高校に入学するきっかけになってくれたらうれしいです。
取材日:2024年7月
本記事内で話されていることは、個人の体験や感じ方によるものです。現在の学校のカリキュラムや学習の進め方とは異なる場合があります。
メディア紹介
オフィシャルサイト
10代の若者の学びへの価値観や彼らが抱える悩みへの認識には世間との大きなギャップがあります。この問題を解決に導くため、みんなでもっと自由に語りあえるようになれば今よりもちょっとだけ良い世の中になる気がする、そんな思いでさまざまな立場からのリアルな声を届けていきます。
プレマシードについてGo通信制高校
多様な角度から通信制高校やサポート校、技能連携校、高等専修学校を紹介するポータルサイトです。偏差値や知名度など単なるスペックの比較ではなく、10代の悩みややりたいことは個性としてとらえ、それを解決する学校の個性とのマッチングを目指します。