アメリカの日本人学校に無理やり通い続けた結果、双極性障害になって中学入学を機に帰国
父親の仕事の都合で、私は幼稚園から小学校卒業までをアメリカで過ごしました。日系幼稚園と日本人学校に在籍していたので英語を話す機会はなく、中学に入学するタイミングで日本に帰国しました。帰国する選択をしたのは、アメリカの環境がとにかく合わなかったからです。
最初に心に不調をきたしたのは小学1年の時。日本人学校は私のように親の仕事の都合で入学する生徒がほとんどなので人の入れ替わりが非常に激しく、幼稚園時代からの友達は全員帰国しており、仲の良い子は1人もいませんでした。初めての環境に知らない人ばかりで、ただでさえ緊張するのに担任の先生もとても怖く、やんちゃな生徒がいた私たちの班だけ教室の隅に追いやられて授業が続行されるなど、学校生活を楽しむ余裕はまったくありませんでした。
次第に学校に通うことが嫌になり、毎朝母親に引きずられて通学バスに乗せられるように。アメリカでは保護者が子どもを学校に行かせないとネグレクトとして通報され、家宅捜索が行われることがあります。
家にも学校にも逃げ場がなく、鬱屈とした日々が続いた結果、小学5年でついに食事ができなくなり、病院で躁(気分や活力が高揚している状態)と鬱(気分や活力が低下している状態)を繰り返す双極性障害と診断されました。ここまでくると現地の小学校なら学校に通わず家で勉強するホームスクーリングなどで対応するものの、日本人学校にホームスクーリングの制度はなく、双極性障害と診断されてからも2日に1日のペースで登校し続けました。
中学は、日本の学校を受験し、帰国して中高一貫校へ進みました。日本で良い精神科医とカウンセラーに出会えたことで体調とメンタルは少しずつ改善していきましたが、すぐに毎日登校するのは難しく、やがて不登校に。しばらくしてフリースクールに通い始めました。
不登校になってから、中高一貫校に在籍し続けて高等部への進学を目指すか、公立中学に転校して通信制高校に進学するかを母親に提案されて後者を選び、公立中学に転校。転校後はフリースクールに通いながら、2週間から1カ月に1度のペースで保健室登校をしていました。
とはいえ、フリースクールにもなじめていたわけではありません。女子が少なかったためいつも肩身が狭く、2泊3日の合宿時には体調とメンタルが限界だったのに先生たちにうまく伝えられず、この件が引き金となってフリースクールも辞めました。
キャンパスの雰囲気やスクーリング内容にひかれ、ID学園高校に入学
アメリカの日本人学校、日本の中高一貫校、公立中学校、フリースクールと所属を変えながらもなかなか定着できず、心機一転を図って通信制高校の合同説明会に参加しました。初めて参加したのは中学2年の6月、私にとっては数少ない学校イベントのように感じ、オシャレして行ったのを覚えています。
合同説明会にはそれから複数回参加しました。中学2年の9月に不登校や引きこもりの専門家の講演を聞いた際、「こんなに子どもの気持ちを分かってくれる人がいるんだ」と感銘を受け、その専門家の方が主催する勉強会に学生として携わるようになりました。
それが転機となって通信制高校のことをもっと知りたいと思うようになり、8校ものオープンキャンパスに参加。最終的にID学園高等学校(以下、ID学園高校)への入学を決めました。入学の決め手は、①池袋キャンパスの雰囲気が良く先生や先輩と話した時にとても楽しかったこと、②登校できなくても単位に影響しないこと、③宿泊型のスクーリングがなかったことです。特に、フリースクールの合宿に行って後悔したことがトラウマになっていたので、宿泊型のスクーリングがないことは絶対条件でした。
通信制高校にはどこか暗いイメージがあるかもしれません。しかし、実際に入ってみると暗いどころかむしろにぎやかだと感じます。友達ができるかも不安でしたが、入学式で代表挨拶をしたことでいろいろな生徒が話しかけてくれ、それがうれしくて自分からも話しかけるようになり、自然と友達ができました。すでに入学から5カ月が過ぎましたが、ID学園高校で初めて学校生活が楽しいと感じています。
安心感がある先生や友達のおかげで、トラウマだった合宿を克服
いまは通学型の週3日コースに所属しています。レポートは自学自習で、わからないところがあれば解説動画を見たり、先生に聞いて教えてもらいます。スクーリングはグループワークの授業が多く、スクーリングが午前中に終わるときは友達とランチを食べにいったり、池袋で遊んでいます。
ID学園高校は学校行事もいろいろあり、全キャンパス合同の体育祭では人間文字ゲームや鬼ごっこで競いました。また、探究活動では長野県で行う2泊3日の合宿にも参加しました。これは長野県までバスで移動し、みんなで森林を散策したり、フリスビードッヂボールをしてワークシートを作る、というものです。入学時に宿泊型のスクーリングを行っている学校を避けたように、合宿には抵抗感がありました。それでも勇気を振り絞って参加したところ、頭痛薬や胃薬は飲んだものの合宿メニューを最後まで乗り越えることができました。
他の人にとっては何でもないことかもしれませんが、トラウマになっていた合宿を最後までやり遂げられたことは私にとって大きな成長です。フリースクールに通っていた時は自分の体調やメンタルの変化を先生たちにうまく伝えられず、そのことが原因で先生たちとの間に壁を感じるようになり、フリースクール自体に通えなくなりました。今回も、「フリースクールの時と同じように合宿後に学校に通えなくなったらどうしよう」と考えると怖くなりました。
それでも合宿への参加を決断できたのは、「ID学園高校の先生なら何かあればきっと寄り添ってくれるはず」という安心感と、「一緒に行こう」と誘ってくれた友達がいたから。先生と友達のおかげでトラウマを克服できたのだと思います。
将来は、不登校の生徒やその保護者に寄り添えるカウンセラーになりたい
ID学園高校の良いところは、自由度が高いことです。私は週3日コースですが週に3日通う権利があるだけなので、登校しなくても良いし授業に出なくても構いません。今は体調を優先させ、4月に比べるとあまり登校できていません。
ただ、ID学園高校でいろいろな人とふれ合う機会が増えたことで「自分には社会性とコミュニケーション能力が足りない」と気付けました。高校生のうちにこの2つを伸ばさなければいけないと感じ、いまは再び登校日数を増やし、もっと学校や友達との関わりを増やしたいと考えています。いずれは毎週3日通い、多くの人とコミュニケーションを図ることで社会性を養いたいです。
また、不安な点は学力です。レポートは解説動画を見れば解けますが、小学校や中学校で最低限の勉強しかしてこなかったという自覚があり、苦手な数学などは1日かけてレポートを1枚こなす感じです。卒業後のことを考えても、この3年間でしっかり基礎学力を身につけたいです。
そして、将来は不登校の子やその保護者に対して適切に寄り添い、信頼してもらえるカウンセラーになりたいと思っています。そのためには大学と大学院に進学して臨床心理士の資格を取らなければなりません。
私自身、アメリカと日本で何度もつらい経験をしました。その経験を単に自分の中で消化するだけではなく、同じように苦しむ人のために活かしたいです。道のりは険しいかもしれませんが、目標に向かって諦めずチャレンジしたいと思っています。
取材日:2024年8月
本記事内で話されていることは、個人の体験や感じ方によるものです。現在の学校のカリキュラムや学習の進め方とは異なる場合があります。
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