「プロゲーマーになりたい」という思いから、ルネサンス高校のeスポーツコースに入学
小学4年から中学3年までバドミントンを続け、中学時代はスポーツ少年団で飛び込みもやっていました。中学3年でバドミントン部を引退した時、将来を見据えて何をしたいか考え、そこで思い立ったのがゲームでした。ゲームは子どもの頃から遊んでいましたが、「プロのプレイヤーになりたい」という思いが沸々と湧き上がってきたのです。
高校でゲームを学ぶなら通信制高校のeスポーツコースがベストだろうと考え、進学先について母親に相談すると最初はやはり渋られました。それは至極当然の反応だと思います。私が高校に入学したのは5年前の2019年。ちょうど通信制高校にeスポーツコースができはじめていた頃で、「プロゲーマーになりたいから通信制高校のeスポーツコースに行きたい」なんて親としてはなかなか受け入れられないと思います。
ただ、それでも母親は私の言葉をきちんと受け止めてくれ、最終的には「夢があるなら」と応援してくれました。父親は単身赴任中だったので、eスポーツコースがある通信制高校も母親と一緒に探しました。
特にeスポーツコースへの情熱が大きくなったのは、ある学校のオープンキャンパスで『リーグ・オブ・レジェンド』の大会を観戦してからです。自分が好きなゲームを上手にプレイする人はとても格好良く、「自分もやりたい!」と強く思うようになりました。感覚的には、サッカー部や野球部の生徒が海外のリーグで活躍する選手に憧れるのと同じです。
そして、ルネサンス高等学校、N高等学校、クラーク記念国際高等学校に絞って比較検討し、ルネサンス高等学校(以下、ルネサンス高校)に入学しました。入学の決め手は、当時eスポーツコースのキャンパスが代々木にあり千葉の自宅から通いやすかったこと、通学コースがあったこと、何よりゲームに集中できる時間が長かったことです。母親がネットで口コミも調べてくれましたが懸念になるようなものもなく、安心して入学できました。
ゲームから知識やコミュニケーションの大切さを学び、全国優勝を果たす
ルネサンス高校のeスポーツコースでは、プレイするタイトルと「ガチ勢」か「エンジョイ勢」かによってクラス分けがされます。私は『リーグ・オブ・レジェンド』のプロコースに所属し、週2~3日登校しながら練習に励みました。
『リーグ・オブ・レジェンド』は戦略性が高く、将棋の指し方のように「こう攻撃されたら、こう守る」といった定跡を覚えることがとても重要です。プレイしては覚え、またプレイしては覚え、その繰り返しが上達につながります。
ゲームに否定的な方は「ゲームから学べることなんてあるわけがない」と思うでしょうが、私はこの練習の中で知識の大切さに気付き、大会で成果が出るようになってからはむしろ勉強が好きになりました。
また、『リーグ・オブ・レジェンド』は5人1組のチーム対戦で、ルネサンス高校では個人のランクとやる気が考慮されてチームを組んでいました。コミュニケーションは苦手ではないが得意でもなく、リーダーになった時は不安でしたが、次第にメンバーと話すことや司令塔としてチーム全体を動かすことが楽しくなり、このタイトルをプレイしたからこそ得られたものがいろいろありました。
5人もいれば時にはもめることもあります。それは大体、仲間のプレイに納得できない時です。サッカーで例えると、パスをすれば決定機になったのに、パスをせず強引にシュートを打ちにいって失敗し、それを周りがとがめて、もめる、というパターンです。でも、こうした失敗はゲームの知識やモチベーションの差から起こるコミュニケーションエラーが原因なので、修正できればすぐ仲直りできます。そもそもeスポーツコースに入学している生徒はみんなゲームが好きなので、ゲームの話をしていれば仲良くなれ、友達もつくりやすかったです。
eスポーツコースでの一番の思い出は、『NASEF JAPAN 全日本高校eスポーツ選手権』の前身大会である『NASEF JAPANメジャー』の第1回大会で全国優勝を果たしたことです。コロナ禍でオンライン大会でしたが、一緒に頑張ってきた仲間と優勝でき、本当にうれしかったです。
eスポーツコースの生徒は要注意(?)スクーリング中はゲームができない
eスポーツコースといえども、卒業するにはレポートを提出してスクーリングに参加しなければなりません。レポートは5教科の授業動画を見て問題を解きます。私は毎年夏休みくらいに全てのレポートを終わらせるよう心掛けていました。そして、週に1日は英語とプログラミングの対面授業を受けていました。eスポーツは海外の方が盛んで、英語ができれば海外のゲーマーとも交流できます。そのため、英語の勉強には力を入れていました。
スクーリングは2泊3日の合宿型で、友達とスケジュールを合わせて参加。授業や体育を行うバス遠足のようなものです。ただ、スクーリング中はゲームができないのでeスポーツコースの生徒たちは基本的に不満気です。高校2年のスクーリングがコロナ禍で中止になった時はみんなゲームができると喜んでいました。
ルネサンス高校には制服もあり、個人的にはそのデザインが気に入っていました。先生たちとの距離感も近く、特に『リーグ・オブ・レジェンド』の講師は大学生だったので年齢も近く何でも相談でき、学校全体がとても居心地の良い場所でした。
プロゲーマーと対戦し、壁の高さを実感。新たな夢は、言語の壁を越えること
『リーグ・オブ・レジェンド』の全国大会で優勝した経験から、高校卒業後もeスポーツを学ぼうと専門コースがある専門学校に進学しました。ところが、専門学校ではひたすらランクを上げることが求められ、高校時代と同じようにゲームを楽しむことができなくなってしまいました。
また、プロには1部リーグと2部リーグがあり、まずは2部のチームに在籍し、成果を出せば1部のチームに移籍できます。しかし、専門学校で2部のプロと対戦した際、自分とプロとの間にあまりにも大きな実力差があることに気付きました。
「高校で全国優勝するまで自分なりに必死に頑張ってきたのに、プロになって1部に上がるにはさらに何倍も努力しなければならない」
その事実にがくぜんとし、プロゲーマーという壁の高さを初めて実感しました。同じ頃、目指していたプロリーグが縮小するというニュースも流れ、環境とモチベーションの変化から専門学校を退学します。
その後は、中学時代に所属していたスポーツ少年団の縁でドイツへ行った際、言葉の壁から十分に楽しめなかったことを思い出し、英語力を伸ばそうとオーストラリアに3カ月の短期留学に行きました。今はリゾートアルバイトをしています。
ルネサンス高校に入学するまで、通信制高校は勉強が苦手な生徒が通う学校だと思っていました。中学の頃は私も勉強にうんざりしていましたが、ルネサンス高校のeスポーツコースに3年間在籍し、今では「通信制高校は自分がなりたいものに近づける学校」だと考えています。もっといろいろな知識を吸収したい、もっと他者とのコミュニケーションを楽しみたい、と思うようになったのも通信制高校で学んだおかげです。
プロゲーマーの壁は越えられませんでしたが、言語の壁は私の頑張り次第できっと越えられるはず。今後は英語力をさらに向上させ、さまざまな国や地域を回りながら自分の将来について改めて考えを巡らせたいです。
取材日:2024年8月
ルネサンス高等学校では、eスポーツコースは単位認定や特別活動に含まれません。
本記事内で話されていることは、個人の体験や感じ方によるものです。現在の学校のカリキュラムや学習の進め方とは異なる場合があります。
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