5歳からゲーム一筋。不登校を乗り越えるきっかけもゲームだった
私は幼い頃からゲームが好きで、5歳の時にWiiの『Newスーパーマリオブラザーズ』を買ってもらいプレイしていました。小学校と中学校では『ポケットモンスター』のXYとサン・ムーンに夢中に。特に、中学生の頃にプレイしていたサン・ムーンはネット対戦ができ、これがゆくゆくeスポーツコースに進む原点だったと感じています。
たかがゲームと思うかもしれませんが、対戦で勝つためには知識と技術が必要です。例えば、ポケモン対戦ではまず6体のパーティー(ポケモンのグループ)を組み、相手のデッキを確認してからバトルをする3体を選びます。どのポケモンを選べば有利に戦えるか、ポケモンの属性や特技から考えるためポケモンに関する知識量が問われ、さらに相手がどのポケモンを選び、どのように戦ってくるかまで考慮します。複雑なジャンケンのようで、だからこそ相手との読み合いに勝てたときはとてもうれしいです。
中学生の頃はYouTubeでポケモンの対戦動画を見ていて、動画で紹介されたポケモンの強さをゲーム内でよく確認していました。
私の人生では、ゲームは娯楽以上の大きな意味を持っているのです。
中学卒業後は全日制高校に進学しますが、ストレスからくる頭痛によって1年次の秋から学校を休むようになり、自室でゲームの配信や動画を見るだけの生活を送っていました。不登校が長期化し、2年次の夏に「このままでは進級できない」と分かり通信制高校への転入を検討。学校を選ぶ際、これまでずっとゲームを楽しんできた経験から「ゲームを学べる学校ならもう一度登校できるようになるかもしれない」と考え、ルネサンス高等学校のeスポーツコースに転入しました。
つまり、不登校を打破するきっかけも、ルネサンス高校に転入した理由もゲームだったんです。
eスポーツコースで体調が改善。スポーツと同様に、練習によって技術を身に付けていく
ルネサンス高校のeスポーツコースに通うようになってから、ずっと悩まされていた頭痛が改善しました。プロゲーマーや元ポケモンセンター(ポケモンのグッズなどを扱う専門店)の店員などユニークな経歴をもつ先生、一緒にゲームをできる友達、そして存分にゲームをできる環境に恵まれたことで学校へのストレスが軽減し、体調の改善につながったのだと思います。
eスポーツは主にチーム同士で対戦します。球技のように全身を動かすことはありませんが、他のスポーツと同様に繰り返し練習することでスキルを磨き、チームで協力して勝つための戦略を練っていきます。
例えば、サッカーでは試合中でも自分の思い通りにボールを蹴れるよう、練習で何度も何度もボールを蹴ります。同様に、シューティングゲームでは「エイム」と呼ばれる敵に正確に弾を当てる技術が重要で、エイムがうまくなるために弾を当てる動作を繰り返し行い、技術を磨きます。地道な努力を積み重ねて段階的に上達していく過程は他のスポーツと同じです。そして、どのような状況に陥っても平常心を保てるメンタルと基礎技術、ゲームへの理解度がいわゆる「心技体」となり、心技体が備わることで対戦に勝てるようになります。
運動能力の向上にはつながらないかもしれませんが、1つのことに打ち込む姿勢や練習によって自分の成長を実感できること、みんなと協力して戦略的に動くことなど、多くのスポーツで得られる経験や達成感はeスポーツも同じです。「ゲームだから良くない」「何の役にも立たない」とは言いきれませんし、スポーツをする上で大切なことや身に付くことが同じだからこそ、ゲーム対戦ではなくeスポーツと呼ばれているのだと思います。
ゲームを通して論理的思考力や集中力が鍛えられた
ゲームの面白いところは、ジャンルやタイトルごとに楽しいと感じる部分や必要なスキルが違うことです。また、学ぶこともたくさんあります。ポケモンのカードゲームに熱中した時は、自分がやりたいことを実現するためにはどうすれば良いか思案する中で、物事を論理的に、順序立てて考える能力を鍛えられたと思います。
年齢を重ねていくと、学生の頃に勉強していた内容は忘れていくものです。数学の公式や古文の文法など、普段使わない知識はしばらくすると抜け落ちていくはずです。
一方、物事を論理的に組み立てる力、やらなければならない時の集中力など、仕事で発揮できるスキルはなかなか失われません。私自身、ゲームを続けることでこうした社会で役立つスキルを身に付けることができたと感じています。
ゲームはデジタル全般の適応力を育ててくれる。それが将来を切り拓く術となる
物心がついた時からゲームに触れてきた私にとって、ゲームは日常の中で当たり前にあるものでした。ゲーム好きが高じて、今は横浜デジタルアーツ専門学校で映像の勉強をしています。映像にはデザインや音楽などさまざまな芸術が詰まっているので、実写映像の授業に加え、3DCG(3次元コンピューターグラフィックス)やDTM(Desk Top Music:パソコンを使った音楽制作)も学んでいます。
プレイヤーの没入感を高めるため、RPGのようなゲームには随所にムービーが盛り込まれています。eスポーツの大会でも、ゲームタイトルやチームの紹介ムービーが流れます。将来的には何かしらの形でゲーム業界に携わりたいと考えていますが、映像を学ぶことがとても面白いので、できればゲームのオープニングムービーやeスポーツの紹介ムービーを作りたいと思っています。
eスポーツコース出身というと「プレイヤーになりたい人」と思うかもしれませんが、私はゲームをプレイしながらその映像美に魅せられていきました。
ゲームは映像や動画、プログラミング、モーションキャプチャーなど、デジタル全般の技術が結集した作品。ゲームをプレイする中で、夢を実現するために必要なデジタル全般の適応力も育てることができたと感じています。
子どもがゲームばかりしていたら、親は怒って当然です。いつも怒られていた私ですらそう思います。ただ、それでもゲームを好きな気持ちを抑えられずプレイし続け、その結果、ゲームの映像をつくりたいという夢ができました。
子どもがゲームをし続けていたら、親が止めるのは正しいことです。でも、どうか取り上げないでください。ゲームと完全に隔離せず、触れる術が残されていれば、ゲームを好きであることが将来を切り開く道になるかもしれません。
もし不登校になっていなかったら、もしゲームが好きじゃなかったら、私は全日制高校から大学に行き、社会に出ていたかもしれません。
学校に通えなくなるまでは自分が不登校になるなど想像もしていませんでしたし、通信制高校への転入はとても勇気のいる行動で、入学後は自分の世界が変わってしまうのではないかと思っていました。
ところが、ルネサンス高校でさまざまなストレスから解放され、好きなゲームを楽しめる環境に身を置いたことで「自分の好きなことをやろう」と思えるようになり、心身ともに楽になったのを覚えています。
好きなものを楽しむことで自分らしい人生を歩めるようになる。勉強でも、スポーツでも、eスポーツでも、好きなものを楽しめることが素晴らしいことなのだと思います。
取材日:2024年7月
ルネサンス高等学校では、eスポーツコースは単位認定や特別活動に含まれません。
本記事内で話されていることは、個人の体験や感じ方によるものです。現在の学校のカリキュラムや学習の進め方とは異なる場合があります。
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