コロナ禍の休校が明けると、被害妄想がはじまった
中学1年の頃は学校がとても楽しく、委員会活動を頑張りながら毎日友達と遊んでいました。しかし、そんな中学生活はコロナ禍で一変。中学1年の冬から学校が休校となり、中学2年の夏までオンライン授業を受けることになりました。その年の冬には分散登校が始まりましたが、1年次に築いた友人関係はリセットされてしまい、分散登校として再スタートを切ることへの不安が拭えず、あんなに輝いていた学校での日々がどこか色あせて見えました。
学校も友達も好きだけど、もう1日中居られる場所ではない。そんな風に考え出すとだんだん思考がネガティブになっていき、「こんな私を周囲はどう見ているのだろうか」と周りの視線が気になり始め、教室に居ると常に誰かに見られている気がしてきました。次第に「誰かに悪口を言われているかもしれない」と思うようになり、被害妄想に陥っていったのです。被害妄想がひどい時は過呼吸も発症し、教室という空間が苦手になりました。中学3年の夏以降は体調も悪く、学校を休みがちになってしまいました。
そのような状態に転機が訪れたのは、中学3年の冬に病院で統合失調症と診断された時です。私の被害妄想や過呼吸に病名が付き、「これからどうなるのだろう」という不安もありましたが、「学校を休む正当な理由ができた」と感じて嬉しくもありました。

精神科の病棟は同年代ばかりで意外と楽しかった
中高一貫校だったので高校はエスカレーター式に進学しましたが、統合失調症という診断を受けたため高校1年の4月から12月まで精神科に入院しました。体育など参加しなければならない授業がある時だけ登校し、残りは病院生活です。精神科への入院なんてさぞ大変なイメージがあるでしょうが、主に10代の子どもたちが集まる児童思春期病棟だったこともあり、陽の光が入る明るい病棟で、みんなとよくレクリエーションをしていました。意外に思われるかもしれませんが、私にとっては楽しい場所でした。
退院まで病院から登校していたため、高校1年の単位はすべて修得でき、高校2年に進級後は、家から週2~3日ほど登校することになりました。担任の先生や保健室の先生が寄り添ってくれ、また学校が好きになっていきました。しかし「正当な理由があり入院している生徒」と「家から通学している生徒」では単位修得の計算式が変わります。1年次より登校日数は格段に増えていても、通学している生徒と見なされると、どうしても登校日数が足りず単位が取れないのです。
「あと1年だしみんなと卒業したい」という思いは強くありましたが、高校3年になって「やっぱり卒業できない」となれば苦い記憶だけが残ってしまいます。友達や先生を含めて「この学校を好きなままでいたい」と考え、高校2年の秋に通信制高校への転入を決めました。

転校したのにスクーリングで挫折。学校の配慮に救われる
転入先としていくつかの学校を検討し、最終的にルネサンス高等学校(以下、ルネサンス高校)に入学しました。ルネサンス高校を選んだ理由は、登校はスクーリングだけの通信コースがあり「この学校なら心身ともに健やかに過ごせる」と思えたからです。
今は毎朝6時に起床して、午前中は動画授業で勉強。午後はアルバイト、散歩、編み物、料理などをすることが多いです。アルバイトはもともと通っていた歯科クリニックの先生に勧められ、先生に治療器具を渡したり、セメントの詰め物を作る歯科助手として働いています。
レポートで分からないところがあれば、先生にチャットで気軽に質問できるので問題ありませんが、スクーリングでは一度つまずきました。
2年生の時に参加したスクーリングは宿泊集中タイプで、四人が一部屋に泊まります。ただ、同じ部屋になったのがとても明るい子たちで、話についていけませんでした。「ここで泊まるのは無理そう」と感じ、結局1日目に挫折しました。別日の個別スクーリングに参加しました。
個別スクーリングも通常のスクーリングと授業内容は同じですが、一人で過ごしたい子や親同伴の子が集まっていて静かな落ち着く環境でした。宿泊も一人部屋が用意されており、「レポートはできるけどスクーリングは苦手」という生徒にもきちんと配慮されていることが嬉しかったです。

自分で休める時間を作れる、その大切さに気付いた
通信コースの良いところは「休める時間を自分で作れる」ことです。休めるという安心感はとても大きく、通信制高校に入ったおかげで統合失調症の症状は安定し、性格も明るくなりました。今も精神科には通院していますが、当時からの看護師さんと会っておしゃべりしています。
通信コースの難点が一つあるとすれば、学校に行かないので話し相手がいないことです。誰かと話したくなっても、前の学校の友達はみんな授業を受けているので、話すことができません。一時、無性に人と話したくなってSNSで話せる人を探していたこともありましたが、今では読書や暗渠(あんきょ)探しなど一人で没頭できる趣味を見つけて、毎日楽しく過ごしています。
ルネサンス高校を卒業したら、織田きもの専門学校へ進学します。日本文化が好きなので、「着物について学んでみたい!」と思って飛び込みました。将来やりたい仕事も専門学校で見つけたいと思っています。
取材日:2025年2月
本記事内で話されていることは、個人の体験や感じ方によるものです。現在の学校のカリキュラムや学習の進め方とは異なる場合があります。
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